2章 省農薬園の土壌 の特性 1.はじめに 2.調査方法

1.はじめに

 

果樹の生育に影響を及ぼす要因として土壌の理化学的特性が考えられる。本章では省農薬園の土壌理化学性およびそれを反映すると考えられるミカン樹の葉成分含量を分析することによって、園内の土壌の特性を明らかにし、ミカン樹の生育に与える影響について検討することを目的とした。

 

省農薬園は1973年に、斜面を均平化するために園北部の表層を削り、園中央部に移動させる形で造成された。開園直後に棉実殻を大量に投入して土壌改良に努め、また開園初期の1976年まで頻繁に鶏糞等の有機質肥料を施用している。さらに1992年までは、調査園に隣接する場所で肥育牛が飼育されており、そこで得られた堆厩肥を継続的に園内に施用していた。また秋肥として鶏糞、魚粕などの配合肥料を施用していた(表1-1)。

 

2.調査方法

 

(1)三相分布および土壌酸度

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 本調査に先だって1989年7月28日に予備調査を行った。省農薬園内の16地点(図2-1)で、地表から深さ0~5cmの位置から100ml採土円筒を用いて土壌試料を採取し、実験室にもちかえり三相分布を測定した。また同年12月7日に同じ地点から表土約500gを採取し、ガラス電極法によってpH(H2O)を測定した。

 

(2)土壌分析法

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a.有効土層の深さおよび貫入硬度(現地調査)の測定

 1992年3月14日および5月31日に園の128地点(図2-1)における土壌の表土の厚さおよび有効土層の深さを測定した。測定には1mの検土杖を用いた。省農薬園の土壌は整地後の土層分化が進んでいなかったため、腐植を含み黒色の土壌を含む層を表土とみなし、地表面からの厚さを測定した。また検土杖が岩盤に突き当たった深さを有効土層の深さとした。検土杖全体が土壌に貫入し、それ以上測定が不可能な場合も深さ1mと記録した。

 1990年11月3日および15日に同じく園内128地点で、地表面からの深さ5cmの位置からそれぞれ約1kg土壌を採取し、以下の分析を行った。採取時に山中式貫入硬度計(山村製作所製)を用いてその地点の貫入硬度を測定した。測定は三回行ない、その平均値を貫入硬度の値とした。

 

b.礫含量の測定

 採取した土壌は植物根を除いて室温で風乾後秤量し、2mmのふるいにかけた。粒径2mm以下と粒径2mm以上の粒子の重量を測定し、後者の重量百分率を礫含量とした。粒径2mm以下の土壌は以下の分析に供試した。

 

c.各元素の定量

 無機養分の分析項目は全窒素、全リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムとした。全窒素、全リンは試料約1gをケルダール分解後20mlの定容とし、それぞれインドフェノール法、バナドモリブデン酸法で比色定量した。その他の元素は試料約100mgを硝酸湿式分解後20mlの定容とし、カリウムを炎光分析法、カルシウム、マグネシウムを原子吸光分析法で定量した。

 

(3)葉成分含量

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a.試料葉の採集と試料調整

 植物体内に吸収された無機養分含量を測定することによって、土壌の栄養状態をより正確に把握することを目的としてミカン葉の無機養分含量の分析を行った。図2-1に示した位置の樹から、西向き当年生枝の健全な成熟葉を一樹あたり3枚ずつ、計6枚採取した。試料は土壌と同日(1990年11月)に採取した。採取したミカン葉は洗浄後70℃で通風乾燥し、ウイレー粉砕器で粉砕して試料として用いた。

 

b.全窒素および全リンの定量

 試料約200mgを硫酸分解後、土壌試料と同様の方法で定量した。

 

c.カリウム、カルシウム、マグネシウムの定量

 試料約100mgを湿式分解後、土壌試料と同様の方法で定量した。