EMについて

by 白坂 雅子(京都大学農学部農学科四回生)

 

 EMのことを書こうと思ったのは、寝台車で隣り合わせたおじさんとの世間話がきっかけだった。その人が、しきりにEMのすばらしさについて語るので、いったいどういうものだろうと興味を持ったのだった。農業、環境、医療と様々な方面で利用されているようだが、ここでは、農業に関連することだけ取り上げてみた。

 EMとは、「有用」Effective と「微生物」Micro-organisms を組み合わせた「有用微生物群」の略で、琉球大学の比嘉照夫教授がつくった言葉である。その名の示すとおり、「蘇生の方向性をもつ」、つまり、良い方向へ向かう、役に立つ微生物の集団であり、光合成細菌、酵母菌、乳酸菌、麹菌などを含む、5科10属80余種の微生物が入っている。これらを一種ずつ単独で扱うのでなく、組み合わせたことで、思いもよらない良い結果が得られたようだ。

EMが実際、どのような働きをしているかというと、まず、生命力が衰えたり、物質が劣化するのは、「酸化」現象のためであり、EMは、それに対抗する「抗酸化」作用をもつ抗酸化物質をつくる能力を持っている。ここで「抗酸化」作用とは、酸素が活性化して酸化状態を引き起こす「活性酸素」の害を抑制する力である。

 病気というのは強い「酸化状態」であるから、植物がEMによって「抗酸化力」を持てば、病気にやられることもなくなる。また、害虫は、酸化物質を好む性質があり、これも「抗酸化力」を持つことで防げる。土壌についても、抗酸化物質と微生物の発する波動によって、保水性、通気性が保たれ、連作障害もおこらなくなる。雑草についても、EMで一斉に発芽させて除去してしまえば、後は問題ない。

 つまり EM を使うことで、農薬、化学肥料を使わずに、環境は保全しつつ、しかも収量、品質は向上する、理想の農業ができる。比嘉教授は、次のような理想の農業の6ヶ条を挙げ、EM農法が、これらの条件を全てクリアすると述べている。

  • 無農薬、無化学肥料の農業
  • 除草剤を使用しない雑草対策
  • 無耕起栽培
  • 環境を保全する農業
  • 品質の真の向上
  • 経済性の確保

 EMについては、その中身が公表されていない、世界救世教という宗教団体が関わっているなど、うさんくさいところもあるのだが、この技術についてだけなら、すごいものだ。悪いことが本当にひとつもないのか疑わしくはあるが、これからの農業が進んでいく方向に、EM農法というものがあってもいいと思った。

 

参考文献:地球を救う大変革1、2/比嘉照夫著/サンマーク出版

     普及士のための自然農法EM講座/自然農法科学技術研究所