和歌山県での除草剤の変遷について

池田里絵子(京都大学農学部農学科四回生)

 

 私は和歌山県で、1年間にどのくらいの量の除草剤を使っているのか、また、省農薬、無農薬あるいは有機栽培によって作られた野菜、果物がもてはやされるような現在において、除草剤の使用はどのように変わってきたのかということに注目してみました。

 

 まずミカン園で近年使われている除草剤について、下津町の防除暦を調べてみると次の6つがありました。

 

 以下要点だけをまとめてみます。

 

 

1. ジクワット・パラコート液剤7-5=プリグロックスL

 

 生育中の雑草の茎葉に散布してやると草種を選ばす、速やかに枯殺できる。

 一年生雑草に対する殺草効果が大きく、雑草の生育が盛んな時期に10aあたり800~1000ml程度散布する。

 

 

2. グリホサート液剤41=ラウンドアップ

 

 ジクワット・パラコート液剤と同じく、生育中の雑草の茎葉に散布してやると、草種を選ばす枯殺できる。重要ポイントは春草、夏草、一年生雑草、多年生雑草、つる性雑草、ササ類、落葉雑潅木ありとあらゆる雑草に聞くことである。10aあたり300~50gを25lの水に薄めて散布する。

 

 

3. DBN粒剤2.5=カソロン乳剤

 

 雑草の種子の発芽を強力に抑制するほか、根から吸収されて芽や根の先端などの分裂組織の細胞を破壊して、雑草を殺す。

 畑地一年生雑草によくきき、春先の雑草が発生し始める頃に、10aあたり20~25kg散布する。

 

 

4. アメトリン乳剤25=ケザパックス乳剤

 

 茎葉あるいは根から吸収させることによって、草丈30~50cmのものを殺草する強力な作用を持っている。

 畑地一年生雑草によく効き、梅雨明け直後に10aあたり1000~1500ml使用する。

 

 

5. ブロマシル木和剤80=ハイバーx

 

 雑草の発生を防ぐ働きと、根から吸収されて茎葉部分に移行することで生育中の雑草を枯らす働きを兼ねている除草剤である。

 水で薄めて10aあたり150l(雑草発生前)、あるいは200~300l(雑草生育中)散布する。

 

 

6. DCMUターバジル水和剤40-39=ゾーバー

 

 雑草の発生前あるいは生育中に用いることができ、雑草の種類を選ばず殺草できる。ポイントは除草剤の有効期限が極めて長いことである。(2~3ヶ月)

 10aあたり200~300gを水15lに溶かして散布する。

 

 

 以上の除草剤が主に196?年以降使われてきました。ここで使用量をグラフにしてみます。

 

このグラフを見てまず疑問に思うのは、なぜ1.ジクワット・パラコート液剤、2.グリホサート液剤が増加したのか?ということです。

 

 これにはその性質があげられるでしょう。まず1.はそれまで使われてきたパラコート液剤が高濃度の薬剤であり、危険であったために使われにくかったのですが、それを低濃度にしてジクワット剤を加えたために、いままでよりも安全で使いやすくなったこと。また、効果がすぐに現れるので、せっかちな(?)日本人の性格にあったのでしょうか。

 

 2.についてはどのような種類の雑草にでも、よく効くということです。これも、何種類もの雑草を殺すために、それだけの数の除草剤をまく必要が無く、便利であるということが言えるのではないでしょうか。

 

 また、1.2.に共通することには、他の除草剤と較べて散布量が少ない、すなわち仕事が行いやすいことがあげられると思います。

 

 このグラフを見てみて驚くことは、除草剤の使用量が1987~89年を除けば、増加する傾向にあることです。

 

 これは、1985年以前に使われていた除草剤が使われなくなったということもあるかもしれませんが、省農薬、無農薬などとよくいわれる現在においては、少し矛盾することだと思いませんか?

 

 このことについては、農薬ゼミあるいは、個人個人でこれから考えていかなければならないことだと思います。