農薬について思うこと

by 池田里絵子(京都大学農学部農学科四回生)

 

 「農薬についてどう思うか?」今年になって何度となくこの問題がたずねられるようになってきました。恥ずかしいことなのですが、私はたずねられる度に、その答え方が変わってきています。

 ゼミに参加しはじめた頃は、農薬は使用するべきではない、使用しなくても十分に農業をやっていけるはずだと考えていました。これは、実家の周辺の水田に真っ白になるまで散布されている農薬に対する嫌悪感や本からの影響も十分にあったと思います。しかし、3回生になって高槻農場での実習を通じて、農薬について考え直さなければならないようになりました。まず第一に、梨や桃などの果樹は病害虫に非常に弱く、農薬を使用することでその被害を減らさなければやっていけないということです。また、使用する農薬についても、収穫物に対して残留性の低いあるいはないものを用いて散布し、そうせざるを得ないのだそうです。第二に実習での水田の除草作業をやったのですが、小さい雑草を抜いていたらきりがないぐらい雑草が生え、他の作業にも増してきつい作業だと感じました。しかし、驚いたことにその水田は除草剤を散布してあったそうです。私は収穫物に残留性がなければその農薬を使用してよいというのは生態的な面から見てもかなり問題があることだと思いますが、そのような農薬でもってしても使用せざるを得ない現状を見たような気がしました。

 農薬は使用するべきでないが、現在の日本においては使用せざるを得ない。このことについて流通・消費者の面から見たことがありました。以前、ゼミ「消費者が虫のついていない見栄えのよいものを選ぶから、農家の人は農薬を使用しなければやっていけないんだ」ということについて話が触れたことがありました。その時に「では見栄えのいいきれいなハクサイと農薬を使っていないことを売りものにした虫のいっぱいついた値段の高いハクサイがあればどちらを買うか?」と聞かれました。いくら農薬ゼミのメンバーといえどもみんな答えに困ってしまったことを覚えています。

 ここまでだらだらと書いてきたのは、私自身、農薬について今後どのように考えていくべきなのか、はっきりと分からないからです。そこで私は今後、省農薬あるいは無農薬を実践している農家の方々と交流をもち、もっと「農薬を使わない」ということについて実際的に勉強していくのがおもしろいと思います。